はじめに
自分は普段、iBasso audioの「DX180」というDAPに、AAWの有線イヤホン「Z06」を繋いで音楽を聴いています。部屋のスピーカーもJBLの「Authentics 200」を使っていて、正直そこそこ耳は肥えている方だと思います。実際、ワイヤレスイヤホン・ヘッドホンの音質には満足できないことがほとんどでした。
そんな自分が今回手に取ったのが、Nothingの完全ワイヤレスイヤホン「Ear(3)」です。結論から言うと、物理的な音質そのものがこの有線環境を超えてきたわけではありません。ただ、Ear(3)の「空間オーディオ」機能には、正直かなり驚かされました。ソフトウェア処理による音質向上が、ここまでの領域に来ているのかと実感させられた一台です。
Nothingというブランドについて
Nothingは2020年10月、元OnePlus共同創業者のCarl Pei(カール・ペイ)がロンドンで設立したブランドです。「テクノロジーを再び楽しくする(make tech fun again)」を掲げ、内部構造が透けて見える半透明素材を使った特徴的なデザインで知られています。
2021年発売の完全ワイヤレスイヤホン「ear(1)」が、そのデザイン性と完成度の高さで大きな反響を呼び、2022年には独自スマートフォン「Phone(1)」も発売。スマートフォンからイヤホンまで一貫した透明デザイン言語を展開する、デザイン主導の新興ブランドです。
Nothing Ear(3)の基本スペック

上写真は僕のデスクの一部です。色々写真に入り込んでいますが、今後紹介することになるでしょう(笑)
真ん中に鎮座している箱が今回の主役のNothing EAR(3)になります!
– ドライバー:12mmダイナミックドライバー(改良版)
– ノイズキャンセリング:最大45dB ANC対応
– 対応コーデック:LDAC対応、ハイレゾ再生対応
– バッテリー:本体55mAh(ANC ON/OFFで3.5〜10時間再生)、充電ケース併用(500mAh)で最大38時間
– 空間オーディオ:省電力設計の「スタティック空間オーディオ」に対応
– その他の特徴:充電ケースに集音マイクを搭載し、通話品質を向上させる「スーパーマイク」機能(感度は悪くありませんが、ぶっちゃけ使いません…..)
– 価格:25,800円(税込)

ケースも透明ですが、このケースも黄ばみにくいものを使用しているそうで、私のものも黄ばんでおりません。昔のモデルは黄ばみやすいものもあったらしいですね。技術の進歩です。

中がスケルトンになっていてかっこいいですよね!
僕が選んだのはホワイトなので黄ばんじゃいそうで怖くて毎回使用後に布で拭くことにしています(笑)
空間オーディオとは?ヘッドトラッキングとの違い
Ear(3)の目玉機能である「空間オーディオ」は、HRTF(頭部伝達関数)という技術がベースになっています。耳殻や頭部、肩による音の変化をシミュレートすることで、左右2つのドライバーしかないイヤホンでも、音に包まれているような立体的な音場を作り出す技術です。
AppleやBoseの空間オーディオは、イヤホンに内蔵したジャイロセンサーで頭の動きを常時追跡し、頭を動かしても音の定位(どこから音が聞こえるか)がズレないように処理する「ダイナミック・ヘッドトラッキング」を採用しています。非常に没入感が高い一方、常時センサーを動かし続けるため電力消費が大きいという特徴があります。
一方Ear(3)が採用しているのは「スタティック(静的)空間オーディオ」で、頭の動きをリアルタイムに追跡する処理は行いません。低音を近く、ボーカルをやや遠くに定位させることで音場を広げる、固定的な音響処理です。ヘッドトラッキングがない分、AppleやBoseの実装と比べるとシンプルな仕組みですが、その代わりバッテリー消費を抑えられるというトレードオフになっています。
この記事の評価方針:ハードとソフト、2つの軸で見る
これまでのガジェット記事ではSandbox Index(独自の数式による定量評価)を作ってきましたが、今回はそれが難しいと判断しました。音質は感覚に強く依存する要素で、無理に一つの数値にまとめると誠実さを欠くと考えたためです。
代わりに、評価を2つの軸に分解します。
1. 軸① 素のハードウェア音質:ドライバーそのものが鳴らす音の良さ。これは主観にならざるを得ませんが、評価の基準点として、自分の普段のリスニング環境(iBasso DX180 + AAW Z06、JBL Authentics 200)を先に開示しておきます。この環境を基準に「満足できるかどうか」を語ることで、読者が自分の耳の基準と照らし合わせられるようにするのが狙いです。
2. 軸② ソフトウェア処理(空間オーディオ)の完成度:DSPによる音場処理がどれだけ自然か、没入感があるか。こちらは前述の技術的な仕組み(スタティック空間オーディオ)を踏まえた上で評価します。
この2軸を混同せずに評価することで、「音質が良い」という一言では片付けない、要素分解されたレビューにしたいと思います。
素のハードウェア音質について聴いてみた感想
空間オーディオをオフにした状態のEar(3)は、正直に言うと、他の一般的なワイヤレスイヤホンと大差ないという印象でした。ところが空間オーディオを有効にした瞬間、急に音に臨場感や奥行きを感じ始めるという、面白い体験をしました(この点は軸②で詳しく触れます)。
一方で、普段使っているiBasso DX180 + AAW Z06の組み合わせと比較すると、残念ながら音の密度が薄いというか、「聞こえるはずの音が聞こえない」ような感覚は残りました。
これは原理的にも裏付けが取れそうです。AAW Z06は片耳6基(2DD+4BA、3ウェイクロスオーバー)というかなり作り込まれたハイブリッド構成で、低音・中音・高音それぞれを専用のドライバーが受け持っています。対してEar(3)は12mmダイナミックドライバー1基のみで全帯域を鳴らす設計です。1つの振動板だけで低音から高音まで処理すると、音が重なる複雑なパッセージで帯域同士が干渉しやすく、「聞こえない音がある」という感覚につながっている可能性が高いです。
加えて、Bluetoothの伝送も無関係ではありません。今回LDAC接続で聴いていますが、LDACは最高990kbpsでも、元のハイレゾ相当データの4分の1以下に圧縮する非可逆圧縮です(AAC/MP3のような心理音響マスキングは使っていない分、他のコーデックよりは高域が残りやすいとはいえ)。DX180のような専用DAPが確保できるDAC・アンプの回路規模の余裕も含めると、「ドライバー数の差」が主因、「コーデック圧縮」と「回路規模の差」が副因、という整理になりそうです。
軸②:空間オーディオを聴いてみた感想
物理的な音質そのものがハイエンドな有線環境を超えてきたわけではありません。ただ、Ear(3)の空間オーディオを聴いたとき、ソフトウェア処理による音質向上の効果がここまでの領域に達しているのかと驚かされました。ヘッドトラッキングを行わない「スタティック」な処理という、AppleやBoseと比べればシンプルな仕組みであるにもかかわらず、です。
まとめ・次回予告
この記事の結論としては、ソフトによる近年の音質進化は目覚ましく、おそらく大半の人にとってはこのイヤホンでいいのではないかと思われる時代も来るのかなと思っています。私は有線のイヤホンをDAPに接続して音楽を聴くことに慣れてしまっているため、無線のイヤホン・ヘッドホンはあまりスコープの中になかったのですが、今回久しぶりに手にとってみて、時代の進化を感じたという話でした。
次回なのですが、おそらく自分が出先で使うものを入れておくガジェットポーチについて話していくことになりそうです!ぜひまた見に来てくださいね!


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